改正相続法「配偶者居住権(3)~配偶者居住権の成立要件~」
2020/02/18
前回「配偶者居住権(2)」では、配偶者が配偶者居住権を取得するための要件の一つ目について書きました。今回は、二つ目の要件である②その建物につき、配偶者に配偶者居住権を取得させるという内容の遺産分割、遺贈または死因贈与がされたことについて触れたいと思います。
まず遺産分割ですが、遺産分割の審判も「遺産の分割」に含まれるので(第1028条第1項第1号)、審判によって配偶者居住権を取得することができます。
ただし、家庭裁判所が配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の審判をすることができる場合について、限定的なので(第1029条)注意が必要です。
すなわち、
・共同相続人間で配偶者に配偶者居住権の取得の合意が成立している場合
・配偶者が家庭裁判所に申し出たとき、自宅所有者の不利益を考慮しても配偶者の生活の維持のため特に必要である場合
家庭裁判所は配偶者に配偶者居住権を取得させることができます。
それから、遺言によって配偶者に配偶者居住権を取得させるには、被相続人が遺贈でしなければなりません。「相続させる」旨の遺言で配偶者居住権を取得させると、配偶者が拒みたいとき相続自体を放棄する以外なく、配偶者の利益を害するおそれがあるからです。
死因贈与は、受遺者と契約を結ぶ点で遺贈の一方的な意思表示とは異なりますが、受遺者が法定相続人であっても不動産取得税の課税対象となる点や登記の登録免許税も高くなる点に注意すべきでしょう。
なお、配偶者居住権の存続期間は、原則終身とされますが、遺産分割の協議、審判や遺言で一定期間と定めることもできます(第1030条)。
改正相続法シリーズ
「遺留分制度の見直し」
「特別の寄与の制度」
「共同相続人が預貯金の払戻しをした場合の、その後の遺産分割」
「遺言執行者の権限の明確化」
「配偶者居住権(1)」
「配偶者居住権(2)」
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