アパートオーナーと家族信託
広島市にお住まいの女性(49)からのご相談。
東広島市でアパート3棟を経営している父親(83)が
高齢により腰も曲がり、耳も遠くなってきて、
これまで問題なくできていたアパートの管理が
難しくなってきた。
入居者を募集してくれている不動産屋さんや
リフォーム業者さんとの電話のやり取りは
母親(78)が代わりにしているが、
経営自体は父親しか知らないため、
もし父親に何かあったら
アパートの管理や経営、資産の承継を
どのようにしたら良いのか、とのこと。
そこで、家族信託を使って、親子で一緒に経営し、
数年かけて娘が経営ノウハウを父親から学び、
父親が認知症になったり、
亡くなったりしたときへ備えましょうとご提案。
また、受託者として一般社団法人を作り、
父親・母親・娘を役員にすることで、
家族経営を強調。
経営者としてまだまだ頑張れると話す父親にも
ご納得いただいた。
アパートオーナーご夫婦のお子様は
相談者だけだったので、
共有対策などは不要。
また、アパートローンはすでに払い終わっていたので、
債権者との調整も不要だった。
立地もよく、
建物の手入れもしっかりとされていて
入居率も高いため、
逆に相続税対策、納税資金の確保が必要だった。
郊外のアパートオーナーさんの多くは、
田んぼや畑を整地し、資金を借り入れ、
そこにアパートを建てることで、
相続税対策を行ってきた。
相続発生時、
アパートの建物評価減と借り入れが効果を発揮する。
しかし、長生きすることで、
アパートローンを払い終わり、
収入が増えることで、
さらなる相続税対策が必要になってきているのだ。
相続税対策は、暦年贈与や父親の生命保険のほか、
家族信託でも行える。
家族信託でできるというか、
対策ができるよう家族信託の契約内容を設定するのだ。
一般社団法人に受託者報酬がとれるよう設定し、
娘に理事報酬を出すことにより、
効果は小さいが対策となる。
また、受託者の裁量で、
アパートの大規模修繕、建替え、新たな建築、
資産の組み換えや資金の借り入れなど、
大胆な対策も今後可能なように信託契約書を作った。
アパートオーナーさんが家族信託することメリットは多い。
オーナーが認知症になったとしても、
受託者が入居者との賃貸契約、家賃管理、
リフォームなどを行うので経営が安定する。
オーナーさんが亡くなっても、
家賃の受け取り口座は受託者名義の口座のため、
凍結しない。
したがって、管理会社や入居者さんを困らせることがない。
オーナーである父親亡き後は、
受益者を母親にすることで、
母親はアパートの管理をすることなく、
家賃から給付を受けることができる。
子供が何人かいる場合などは、
受益権を分割したり、
信託契約終了時、
残余財産の帰属先を管理してくれた子に
指定したりすることで、共有になるのを防ぐ。
このように、
アパートオーナーさんが家族信託するメリットは多い。
オーナーさんが認知症になる前に、
相続が発生する前に、
家族信託が必要かどうか診断しませんか?